金魚のツリガネムシ症の症状と治療方法に関して、これまで経験したことのない初心者の方にもわかりやすく紹介しています。
ツリガネムシ症は、その名の通り「釣鐘(ツリガネ)」のような形をした寄生虫が、金魚の体表に寄生することで発症する病気です。
金魚のツリガネムシ症は、白点病や初期の尾ぐされ病との判別がしにくく、見分け方を間違えて、治療方法を誤ってしまうことが多いです。
これらの見た目が似ている病気と、ツリガネムシ症との違いや見分け方に関してもわかりやすく記載しております。
治療方法さえ間違えなければ、ツリガネムシ症はほぼ確実に治療することが可能です。
ツリガネムシは放っておいても自然治癒しません。
ぜひ、この記事を読んで金魚のツリガネムシ症の治療と白点病や尾ぐされ病との見分け方をマスターしてください。
この記事では写真の紹介に、インスタグラムでの投稿をピックアップし、金魚のツリガネムシ症の写真を閲覧できるようにしております。
また投稿の最後に、金魚の薬浴や塩浴に便利な濃度計算表(自動計算)へのリンクを掲載しています。
誰でも完璧な濃度で薬や塩の量の計算ができます。ぜひご利用ください。
ツリガネムシ症は、金魚の体表に原生生物である「ツリガネムシ(エピスティルス)」が寄生することで発症します。
このツリガネムシ、金魚に寄生しながらも、体液を吸ったり、粘液を食べているわけではありません。
ツリガネムシの食べ物は、「水中を漂うプランクトンやバクテリア」です。
普段は水中に漂いながら、餌をツリガネ状の頭部で捕獲し、生活をしていることから、水の浄化作用もある「金魚にとって良い生き物」です。
金魚の体表の抵抗力が低下したときに、ツリガネムシが金魚の体表に「生活の場」として寄生し、増殖を繰り返すことで金魚にとって「悪影響」を及ぼします。
ツリガネムシの特徴として、「集団で集まって生活している」ことが挙げられます。
個体の一つ一つは、肉眼では確認できないほど小さな生き物です。
ですが集団でまとまって生活をするため、金魚に寄生した際には、金魚の体表に白いふわふわとした粒として確認ができます。
ツリガネムシ症の症状として最も重要なポイントがこの「白くふわふわとした粒状の点」です。
金魚の病気で白い粒といえば、白点病や初期の尾ぐされびょう、水カビ病などとの症状の違いに迷うかと思います。
また、進行したツリガネムシ(エピスティルス)症は、尾びれや皮膚の組織形成を阻害することから、尾ぐされ病や穴あき病とよく似た症状になります。
こちらに関しては後半にわかりやすく記載していますので、このまま読み進めていただいて問題ありません。
ツリガネムシ症の最大の原因は「水質の悪化」です。
特に、水中にエサの食べ残しや金魚のフンなどの有機物が増えた時に発症します。
ツリガネムシは微生物研究でも非常にメジャーな「分解者」です。
世界中の河川や海に生息しており、水中の有機物を食べ、分解することで水をきれいにしています。
これは金魚の水槽内でも同じです。
水槽内の有機物が増えると、それをエサとするツリガネムシの生息数も増加します。
水槽内で異常に増加したツリガネムシは、本来生息場所として選ぶはずのない金魚の体表にも付着し、増殖を始めます。
金魚の体表はツリガネムシの寄生により粘膜の分泌がうまくいかず、免疫機能の低下から金魚は弱り、さまざまな感染症に感染しやすくなります。
本来、水を綺麗にしてくれる良い生き物であるツリガネムシが、水槽内で爆発的に増殖することで金魚の体表に寄生してしまうことがツリガネムシ症の原因です。
ツリガネムシは細菌やウイルスとは異なり、小さな生き物ですので、寄生虫に効果のある薬であれば一通り使用することができます。
金魚の寄生虫と薬に関してはこちら
ここでは数あるツリガネムシに効果のある薬の中でも、利用される頻度が多く、きちんと効果があり手に入れやすい薬をピックアップしています。
ぜひ、ツリガネムシ症の治療に活用してください。
白点病、水カビ病の治療によく利用されますが、ツリガネムシの治療でも最もオススメの薬です。
無色透明であり、水草への悪影響も少ないことから、熱帯魚などのレイアウト水槽でも利用されます。
ツリガネムシに対しては後述するメチレンブルー系のグリーンFリキッドやメチレンブルーよりも遥かに高い効果があります。
アグテンの使い方はこちらに詳しく紹介しています。
主成分はマカライトグリーンであり、アグテンと同じです。
薬効も全く同じですので、どちらでも入手しやすいほうを手に入れましょう。
アグテン、ヒコサンZがツリガネムシ症には最もおすすめの薬です。
ホームセンターでも取り扱いのある比較的入手しやすい薬ですので、ツリガネムシ症を完治させたいのであれば、必ず入手するようにしましょう。
白点病、初期の尾ぐされ病、水カビ病に効果があり、薬効は粉末のニューグリーンFと変わりません。
メチレンブルーと比べると、ツリガネムシに対して若干高い効果がありますが、あくまで補助的な利用に留めましょう。
白点病や水カビ病に効果があるものの、ツリガネムシにはあまり効果がありません。
症状の程度によりますが、病名がツリガネムシ症で間違いない場合は、アグテンやヒコサンZの利用を推奨します。
ツリガネムシ症は他の病気と見分けるのが難しいと言われています。
その理由として、ツリガネムシ症と症状が非常に似ている病気が多いことが挙げられます。
先ほど紹介したように、ツリガネムシに効果がある金魚の薬は少ないです。
金魚が本当はツリガネムシ症であるにもかかわらず、間違った治療を行った場合、効果がないまま、ツリガネムシ症が悪化してしまいます。
ここでは金魚のツリガネムシ症とよく間違える病気に関して、症状の違いと見分け方をまとめています。
この記事を読んでいる方の多くは、飼育している金魚に「ツリガネムシ症の疑い」がある方です。
本当はツリガネムシ症じゃなかった、といったことも、もちろん考えられると思います。
適切な治療を選択する上で最も重要な内容ですので、ぜひご確認下さい。
白点病とツリガネムシ症の見分け方
恐らく最も多くの方がツリガネムシ症と間違えるのが、白点病です。
実は、白点病とツリガネムシは目視で簡単に見分けることが可能です。
注目して見るポイントにコツがありますので、それぞれ紹介します。
- 白い点のサイズ
- 白い点が広がっている面積
上記の2点をチェックするだけで簡単に白点病とツリガネムシ症を見分けることができます。
白点病もツリガネムシ症も、どちらも金魚の体表に「白い点」が発生します。
<白点病>
白い点は、それぞれが「白点虫」と呼ばれる「白い色をした丸い形状の寄生虫」です。
多少の誤差はあるものの、一般的には均等なサイズのごく小さな白い点が金魚の体表に大量に出現します。
「1点=1匹」であるため、形は基本的に円形であり、それぞれが独立して発生します。
<ツリガネムシ>
白点虫とは異なり「1点=ツリガネムシ」の集まり(コロニー)です。
ツリガネムシは集団で金魚の体表に付着しているため、点のように見えるのは全て複数のツリガネムシの集まりです。
それゆえ、ツリガネムシの集団のサイズによって、白い点は、大きなものや小さなもの、崩れた円形のものなど、サイズが均一にはならずバラバラとしています。
集団によっては、粒のように盛り上がって金魚の体表に付着するケースもあります。
白い点のサイズがある程度均一で、独立したものであれば「白点病」、バラバラで、盛り上がったものもあれば「ツリガネムシ」と判別することができます。
白い点がどのように金魚の体表に広がっているのかも、見分ける上での重要なポイントです。
白点病は、頭の先からヒレの先まで、全身に白い粉が一気に広がります。
きちんと対処すれば死にいたる病気ではないものの、白い点てんがびっしりと金魚の体表に広がるため、心配になる程です。
対してツリガネムシ症の場合、集団が人の目視で確認できるようになったタイミングで発見されるため、「白い粒が一粒だけある」といった状況もよくあります。
ツリガネムシが増殖するスピードは白点病に比べるとゆっくりであるため、一粒、また一粒と白い不規則なサイズの点が金魚の体表に出現します。
白い点がどのように、どのくらいの面積で広がっているのかも、白点病と見分ける上で重要なポイントです。
上記2つの見分け方を確認し、ツリガネムシではなく、白点病だ!と判明した場合はこちらの記事をご覧ください。
※白点病の症例、塊ではなく、小さな点々が複数、全身に広がっている
※ツリガネムシの症例、写真3枚目の向かって左側、尾びれの先端に付着している白い塊です。
※こちらも白点病ではなく、ツリガネムシの症例です。見た目では水が美しく見えますが、水質が良いとは限りません。見落としに注意しましょう。
初期の尾ぐされ病とツリガネムシ症の見分け方
初期の尾ぐされ病では、白いぼんやりとした見た目の粒が金魚のヒレに発生します。
この粒がツリガネムシと似ているため、見分けることが難しいとされています。
初期の尾ぐされ病の白い粒と、ツリガネムシ症の白い粒の見分け方として
- 白い点が体表に発生しているかどうか
- 全てのヒレに異常がないかどうか
これら二つの見分け方が存在します。
尾ぐされ病はたとえ初期症状であっても、必ず金魚のヒレに発生します。
そのため、ヒレではない箇所に白い点が発生していた場合に、ツリガネムシ症か、それ以外の白い点が発生する金魚の病気を疑いましょう。
よく、金魚のヒレに白い点が見られたときに、尾ぐされ病の初期症状を疑う人が多いですが、ほとんどの場合において既にどこかしらのヒレに異常が発生しています。
尾びれの異常ばかりに目が行きがちですが、胸びれや腹びれなど、普段あまり注目して見ないヒレが欠けていないでしょうか?
尾ぐされ病は進行が非常に早い病気ですので、数日様子を見るだけでみるみるうちにヒレがかけていきます。
本当の初期に見つけられる方はほとんどいないため、一度金魚の全てのヒレを目視でよく観察し、欠けが発生していないかを確かめましょう。
ヒレの先がボロボロになっていたり、穴が空いていたりする場合、金魚は尾ぐされ病を発症しています。
尾ぐされ病は進行が早く、ヒレが欠ければ欠けるほど再生にも時間がかかってしまうため、早期発見早期治療が重要です。
ツリガネムシ症を発症している金魚は、ツリガネムシによって皮膚の損傷が続くため、二次感染を起こしやすく必然的に「尾ぐされ病」の発症率も高くなります。
尾ぐされ病が治ったと思ったらすぐに再発し、尾びれに白いもやもやがある場合はまず「ツリガネムシ症が原因での尾ぐされ病の再発」を疑いましょう。
⬇︎【尾ぐされ病の治療に関してはこちら】
水カビ病とツリガネムシ症の見分け方
金魚の水カビ病とツリガネムシ症も、症状が似ているため見分けるのが難しいです。
ですがこちらも、以下の二つのポイントに着目することで見分けることができます。
- 白い部分のサイズ
- 白い部分は点状かゼリー状かどうか
水カビ病はカビが金魚の体表に寄生することによって発症します。
この時、ごく初期は白い点が付着しているように見えますが、発症から数日で白い点はみるみるうちに拡大していきます。
ツリガネムシのように「白い点」が体表に存在しているというより、「局所的に白くぼんやりとした箇所がある」といった状態になることがほとんどです。
水カビはごく初期のタイミングをのぞいて、白いゼリー状の物体です。
ツリガネムシ症の場合はおできのような白い点が体表に発生するのに対し、水カビはふわふわとした半透明のゼリー状の物質が体表に付着したような見た目になります。
水カビの種類にもよりますが、ゼリーの外側に明らかに胞子の枝状の様相が確認できることも多いです。
もし、金魚の体表に付着している白い物質が「半透明のゼリー状」である場合、ツリガネムシ症ではなく「水カビ病」が疑われます。
水カビ病も進行が早い病気ですが、早期発見と適切な治療を行うことで完治させることが可能です。
水カビ病の治療に関してはこちら
※典型的な水カビ病の症状。ふわふわした半透明のゼリーが付着する。写真はどじょう。
これら以外にも、ツリガネムシ症と見た目が似ている「白い、ふわふわとした症状」が特徴的な金魚の病気はたくさん存在します。
金魚キングダムでは白いふわふわ、もやもやに特化した病気もわかりやすくまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ツリガネムシ症の予防方法はズバリ「きちんと水換えを行うこと」です。
特に、ツリガネムシ症に関してはこの一点に尽きます。
理由としては、ツリガネムシは本来金魚に寄生する生き物ではないことが挙げられます。
本来寄生することもなく、その必要もない安全な生き物が金魚に寄生してしまうということは、「寄生せざるをえない」状態になっているということです。
冒頭で紹介した通り、ツリガネムシは水中の小さな有機物を食べて分解し、増殖をしています。
水槽という隔離された環境で、この有機物の量が増え続け、それを分解するツリガネムシも増え続けたことで、住む場所がなくなり、金魚の体表にまで進出してしまったというのが、ツリガネムシ症の発生のメカニズムになります。
つまり、水槽内の有機物の量さえ適切に保つことできていれば、ツリガネムシ症は本来発生しようがない病気ということになります。
この有機物ですが、一般的には金魚のフンや餌の食べ残し、枯れた水草などが該当します。
有機物が増えている水槽=シンプルに汚い水槽です。
たとえ水槽の水が透明であっても、有機物が底に溜まっている状態であれば、同じく汚い水槽ということになります。
汚い水槽は、水換えを行うことで綺麗にするしかありません。
ツリガネムシ症を発生させてしまうということは、普段の水換えに対する考え方や水換えの方法がそもそも間違っている可能性が高いです。
せっかく最後までこの記事を読んでいただいたあなたには、ぜひこちらの記事もご覧いただき、本当に意味のある水換の方法を身につけて欲しいと思います。
きちんとした水換えをマスターすることで、ツリガネムシ症を未然に防ぐようにしましょう!
金魚の水換えの方法に関してはこちら
熱帯魚とは異なる金魚の水換えの心構えはこちら