金魚の赤斑病の治療方法と薬に関して、初めて赤斑病を経験する方にもわかりやすく紹介しています。
赤斑病は、金魚の病気の中でも、細菌による「感染症」の病気です。
エロモナス菌と呼ばれる細菌が、金魚の皮膚から体内に侵入することで感染します。
金魚の体表に赤い点が出現する赤斑病は、進行すると死に至る怖い病気でもあり、早期発見、早期治療が重要です。
今回は、金魚を飼育していると必ず経験する「赤斑病」に関して、症状と治療方法をまとめています。
金魚が赤斑病かどうかわからない、どうやって治療すればいいのかわからないあなたにとって、最適な情報をお届けします。
ぜひ、最後までご覧ください。
この記事では写真の紹介に、インスタグラムの投稿をピックアップし、金魚の赤斑病の画像を閲覧できるようにしています。
また投稿の最後に、金魚の薬浴や塩浴に便利な濃度計算表(自動計算)へのリンクを掲載しています。
誰でも完璧な濃度で赤斑病の薬や塩の量の計算ができます。ぜひご活用ください。
赤斑病に感染した金魚の画像(重症)
赤斑病は、別名を「運動性エロモナス症」といいます。
赤斑病の原因はこの、エロモナス菌という細菌が金魚に感染することで発症します。
初期の感染は主に金魚の体表に起こり、感染した箇所は赤いすり傷のような斑点が出現します。
エロモナス菌は、金魚の飼育水や冷凍の生き餌など、どこにでも生息しており、主に水質の悪化が原因で異常繁殖することで、金魚に感染します。
エロモナス菌は常在菌ですので、健康な個体であれば感染のリスクは低いです。
ですが水質の悪化や気温変化により、エロモナス菌の増加に加え、金魚の抵抗力が低下していたり、体表の粘膜の分泌が少なくなっていたりすると、皮膚から感染し体内に広がります。
つまり、ほとんどすべての赤斑病の原因は「水質の悪化」です。
軽度の感染であれば、塩浴でも治療が可能ですが、重症化すると他の病気への二次感染のリスクも高まり、完治させることが難しくなります。
早期発見、早期治療をこころがけましょう。
赤斑病は、金魚の体表に、怪我をしたような赤い斑点ができることが症状です。
よほど狭くて環境の悪い場所で飼育していない限り、金魚が自分から何かに衝突して怪我をすることは稀です。
また金魚には鱗があるため、怪我をしても人間の擦り傷のように赤い血が出ることはまずありません。
体表にすり傷のような赤い充血した症状があったら、まず赤斑病を疑いましょう。
赤くなる箇所は体表だけでなく、ひれや頭部も同様です。
赤く傷ついているだけでなく、鱗が溶けて対象箇所に穴が空いているような場合は、「穴あき病」の可能性も考えられます。
赤斑病・穴あき病のどちらにも効く薬を使用しましょう。
⬇︎【穴あき病に関してはこちらで詳しく紹介しています】
赤斑病の原因菌であるエロモナス菌は、金魚が生活する場所であればどこにでも存在している「常在菌」です。
そのため赤斑病は、金魚の抵抗力が弱る春や秋、水質が悪化したタイミングなどに起こりやすい、比較的身近な感染症であるとも言えます。
赤斑病は治らない病気ではなく、適切な治療を行うことで完治させることができます。
大切なことなので2回繰り返しますが、赤斑病は治らない病気ではなく、適切な治療をすれば完治することが出来る病気です。
この記事では、赤斑病の症状の程度別に、治療方法をまとめています。
ぜひ、治療の参考にしてください。
赤斑病の治療方法を、症状の程度別にまとめています。
適切な治療さえできれば治療難易度は低く、多くの場合において完治させることができる病気です。
これから記載されている内容を「きちんと」「丁寧に」実施するようにしてください。
体表にほんのり赤い点がある場合(初期症状)
水換えを行う
初期の症状では、体表に1点〜2点ほどのほんのりと赤い斑点が出現します。
このころはまだ金魚も元気でエサもよく食べるため、治療も水換えと塩浴だけで十分であることがほとんどです。
金魚の異常に気づき、応急処置的に「水換え+塩の投入」を行うことで、赤斑病だとわかっていない間に治っていることも多いです。
赤い斑点が目視で簡単にわかる時点で、金魚は体調を崩し、水質が悪化していると考えたほうが良いです。
まず、水換えをしましょう。
⬇︎【水換えの方法に関してはこちら】
赤斑病が発生してしまっている時点で、普段の「金魚の水の管理」に関して、間違った認識で行っている可能性が高いです。
⬇︎【多くの方が誤解している金魚の水換えの心構えに関してはこちら】
塩浴を行う
水換えを行った後に、塩浴(塩水浴)を実施します。
初日は0.3%、2日目にかけて0.5%になるまで徐々に塩を投入し、ゆっくり濃度に慣らすようにしましょう。
塩浴のポイントとしては、必ず「後から塩を入れる」ようにしてください。
塩を溶かした後に、真水にいた金魚をいきなり塩水に入れると、「水質の差」からショック症状を起こす(PHショック)ことがあります。
金魚飼育において、「急激に何かが変化する」状況は全てNGです。
ほんのり赤い点がある程度の症状であれば、それまでの金魚の健康状態が良ければ、この「水換え+塩浴」で自然治癒することが多いです。
⬇︎【金魚の塩浴の方法(やり方)に関してはこちら】
体表やヒレに赤いすり傷のような斑点がいくつもある場合(中期〜末期症状)
水換えを行う
多くの方が異変に気づくのが、この段階だと思います。
この段階は、水質がかなり悪化していることがほとんどです。
金魚の飼育水が透明でクリアになっていても、実際にはフィルターには汚泥が溜まっており、雑菌だらけということもよくあります。
特に、砂利やソイルを厚めに敷き詰めて飼育している環境だと、沈殿したフンやエサが腐敗していても、水自体は透明であることが多いです。
気づかないうちに金魚が体調を崩して赤斑病になり、そのままだと塩浴をしても、薬浴をしても、感染症が悪化するだけです。
とにかく、赤斑病が疑われる場合は、既存のバクテリアのことは後回しにし、思い切って水を大規模に変えてしまうことが重要です。
そもそも、既存のバクテリアがちゃんと機能し、水質が良好であれば「赤斑病」は発生しません。
⬇︎【赤斑病が発生しずらい、金魚飼育におすすめのフィルターはこちらで紹介しています】
塩浴+薬浴を行う
水換えとともに塩浴を行い、薬浴も同時に行いましょう。
エロモナス菌に効果がある薬は、
の3種類です。
このうち、費用面でみても、グリーンFゴールド顆粒>エルバージュ>観パラDの順序でおすすめです。
コスパがいいだけでなく、グリーンFゴールド顆粒は治療対象となる病気の範囲が広く、将来的に他の病気になったときも利用しやすいことがおすすめの理由です。
薬浴に関しては、それぞれ用法、用量を守り、金魚の体力と相談しながら実施します。
グリーンFゴールドでの薬浴を7日間行い、金魚の症状に全く効果がなかった場合は、塩浴で3日間置き、エルバージュエースでの薬浴に切り替えるなど、金魚の状態をよく観察したうえでおこないましょう。
※ほとんどの赤斑病が、塩浴+薬浴で完治します。
完治しない場合、水換えがしっかり行えていないか、薬の容量を間違えている可能性が高いです。
⬇︎【薬浴の基本的な方法に関してはこちら】
⬇︎【金魚の薬の量り方に関してはこちら】
体表にいくつもの赤い斑点があり、エラが過剰に動いている(末期症状)
赤斑病の末期症状では、金魚の全身にエロモナス菌が広がり、金魚は力なくぐったりしていることが多いです。
このようなケースだと、おそらく金魚は底でじっとしていたり、エサを食べなくなっているかと思います。
金魚全般に対してそうですが、エラに異常がある時点で、治療はかなり難しいです。
穴あき病や尾ぐされ病、松かさ病を併発するのもこの状態のときに多く、金魚の体力も抵抗力も大幅に落ちています。
まずは水換え+塩浴を行い、様子を見ましょう。
まだエサが食べられるようだったら、観パラDをエサにごく少量混ぜ、直接食べさせる方法が効果的です。
この段階になると、一刻の猶予もないため、通常の薬浴での回復だと間に合いません。
観パラDだと、エサと一緒に体内に直接投与できる分、薬浴よりも早く、高い効果が望めます。
塩浴で少しでも金魚の負担を減らしつつ、観パラDで直接エロモナス菌を撃退しましょう。
エサも摂取せず、苦しそうにエラを動かしている場合は、前述したエルバージュエースや、グリーンFゴールド顆粒で薬浴を行いつつ、様子を見るしかありません。
少しずつ回復し、エサを食べそうなしぐさをするようになったら、観パラDの経口投与に切り替えましょう。
⬇︎【観パラDの紹介と使用方法はこちらにまとめています】
体表に赤い斑点があり、胴体が全体的にふくれている(松かさ病)
体表に赤い斑点がある時点で、金魚は感染症を発症しています。
赤斑病は、金魚の体表の組織にエロモナス菌が感染した状態ですが、感染が「内蔵」に広がった場合、胴体だけがふくれあがります。
これは、内蔵の炎症によって体内に水(腹水)が溜まるためです。
鱗1枚1枚が全て開き、松ぼっくりのような見た目になることから、「松かさ病」と呼ばれています。
多くの松かさ病が、赤斑病や穴あき病をはじめとする「細菌性の感染症」が進行することで発症します。
進行する前に、適切な治療を行う必要があります。
赤斑病と穴あき病について
赤斑病と穴あき病の原因菌はどちらも「エロモナス属」と呼ばれる属性に分類される常在菌です。
よく、どちらも同じ菌であると紹介されていますが厳密には、属性が同じだけで性質は大きく異なります。
赤斑病の原因菌であるエロモナス菌は運動性エロモナス菌と呼ばれ、高水温を好みます。
対して、穴あき病の原因菌は非運動性エロモナス菌(エロモナス・サルモニシダ)であり、比較的低水温を好みます。
非運動性エロモナス菌の適正水温は15度〜23度前後であるため、26度前後で飼育する熱帯魚では穴あき病はほとんど発生せず、春や秋の低水温期の金魚や錦鯉での発症が多い病気です。
運動性・非運動性と性質が大きく異なり、増加する際の適性水温も異なることから治療に効果的な水温や魚病薬も厳密に言うと異なります。
赤斑病は高温期に発生しやすいため、水温をなるべく下げる(夏期だと観賞魚用クーラーがおすすめです)、穴あき病は低水温期に発生するためヒーターを使用してなるべく水温を上げることがおすすめです。
薬に関しても、運動性エロモナス菌が主体の赤斑病では浸透力のあるグリーンFゴールド顆粒が、穴あき病ではオキソリン酸が主成分の観パラDやグリーンFゴールドリキッドがおすすめです。
赤斑病の治療方法の紹介をする前に、治療を確実に実施する上であった方がいいものをリストアップしています。
なるべく追加での購入の必要がなく、あったとしても100円均一で揃う範囲で記載しております。
隔離用の容器 | 別名:トリートメントタンク、バケツや大きめの洗面器でも問題ありません。 |
エアレーション | フィルター付きのものは避けましょう。薬の成分が吸着されてしまいます。 |
塩 | 市販の食塩で問題ありません。にがりの含まれていない純食塩にしてください。 |
薬浴用の薬 | グリーンFゴールド顆粒、観パラD、エルバージュエースの順番でおすすめです。 |
ペットボトル | 薬の濃度を調整する際に利用します。水やお茶が入っていたものにしましょう。 |
100ml以下の溶液が計量できる器具 | 100円均一にあるシリンジやピペットで十分です。 |
隔離用の容器
金魚の病気の治療では基本的に、病気になった金魚の「隔離」を行います。
金魚が生活している水の中には、金魚以外のたくさんの小さな生き物(バクテリア)が生活しています。
塩浴や薬浴を実施すると、金魚の病原菌だけでなく、それらの小さな生き物もいなくなってしまいます。
一度いなくなると再度増加するまでに時間がかかります。
病気の治療を行うときは、治療専用のスペースに金魚を移動し、水温や濃度等、最適な環境を整えることが重要です。
容器は水槽が最適ですが、10ℓ以上の水量が確保できるものであれば大きめのバケツでも構いません。
この容器のことを一般的に「トリートメントタンク」と呼びます。
金魚をトリートメントタンクに移動する際も、金魚の負担を減らすちょっとしたテクニックがあります。
金魚の水合わせの方法に関しても、この機会に知識を深めていきましょう。
金魚のトリートに関して、詳しくはこちらで紹介しています。
エアレーション
治療中のエアレーションには、2つの効果があります。
- 酸素の供給
- 水質の悪化の抑制
酸素の供給
1つ目の効果は「酸素の供給」です。
トリートメントタンクはどうしても水量が少なくなりがちです。
そのため、水中の酸素が少なくなるケースも多く、病気で体力が低下している金魚には大きなダメージになりかねません。
金魚が最大限治療に集中できるよう、エアレーションで十分に酸素の供給を行うようにしましょう。
水質の悪化の抑制
2目の効果は「水質の悪化の抑制」です。
水は流れがないと腐敗が早まります。
治療中の金魚はそれほど動き回ることもないため、どうしても水の循環が止まりがちです。
塩浴や薬浴を実施している水は、水質の悪化のスピードが非常に早いため、エアレーションを行うことで少しでも遅らせることができます。
酸素の供給と水の流れを作ることが目的ですので、エアレーションの強さは、弱い力で行うようにしましょう。
強すぎると、病気の金魚にとって水流がかえって負担になり、弱らせる原因になります。
金魚の薬浴/塩浴の際の注意点として、投げ込み式フィルターを使用する場合、
エアレーションはフィルター無しで行うことが挙げられます。
フィルターを入れたくなる気持ちはわかります。
ですが、フィルターの性能によっては、本当は金魚に吸収してほしい薬が、フィルターに吸収されてしまう危険がありますので、「エアポンプ+エアストーン」のシンプルなセットでの導入をおすすめします。
金魚の塩浴や薬浴で、水質の維持目的でのフィルターは全く役に立ちません。
水質は水換えの頻度を増やすことで維持するようにしてください。
水換えには水質の維持だけでなく、金魚の新陳代謝を活発にする目的もあり、実は病気の回復にも強い効果があります。
塩
塩は塩浴で使用します。
赤斑病の治療に塩浴は非常に有効であり、元気な個体であれば塩浴だけで完治することも多いです。
塩浴で使用する塩ですが、ごく一般的な食塩(塩化ナトリウム:Nacl)を利用するようにしてください。
塩化ナトリウム以外の成分が含まれている「アジシオ」や「伯方の塩」などの、少しお高い塩は絶対に使わないようにしてください。
余計なものが混ざっていない、スーパーで安価に販売されている「食塩」を利用するようにしましょう。
金魚の塩浴には、よく岩塩も利用されます。
理由としては、「結晶が大きくゆっくり溶ける」ため、塩浴をスタートする際の金魚へのダメージが少ないことが挙げられます。
メーカーから販売されている塩浴専用の塩も同じです。
ですが食塩でも、既定量を「複数回に分けて投入する」ことで、金魚を塩水にゆっくり慣らし、岩塩を利用した場合と同じように金魚への負担を減らすことができます。
金額面でも、圧倒的にコストパフォーマンスが高いのは「食塩」です。
薬浴用の薬
赤斑病に効果のある薬はこちらです。
この中で、比較的手に入りやすく、赤斑病以外の病気でも利用できる「グリーンFゴールド顆粒」をおすすめしています。
穴あき病や尾ぐされ病などの、塩浴だけでは治らず、進行が非常に速い病気にも強い効果があります。
濃度計算を行うための計量も比較的しやすく、いざというときに必ず役に立つため、常備薬として持っておくことをおすすめします。
注意点として、よく金魚の病気の薬として利用される「メチレンブルー」は赤斑病には全く効果がありません。
特に治療に慣れていないうちは、上記3種類の薬のどれかを入手するようにしてください。
金魚の薬浴の方法に関してはこちらに詳しくまとめています。
グリーンFゴールド顆粒を使用した薬浴でも同じ方法で実施できますので、ぜひ参考にしてください。
ペットボトル
ペットボトルは500mlサイズで十分ですが、できれば小さめの350mlサイズも揃えておけば軽量する際にピペットやシリンジが届きやすいため便利です。
純粋な飲料水が入っていたものが望ましいですが、お茶や無糖の紅茶が入っていたものでも構いません。
清涼飲料水やジュースが入っていたものはできるだけ避けるようにしてください。
100ml以下の溶液が計量できる器具(シリンジなど)
金魚の薬浴を行う上で最大の難点が「薬の濃度計算と計量」です。
普段お仕事で濃度計算を行う方を除いて、多くの方にとって「そういえば小学生の頃に習ったような、、、」といった内容だと思います。
濃度の計算に関しては、だれでも数字を入れるだけでできるよう、自動計算表を無料で公開しています。
金魚の薬は一通り網羅しているため、ぜひ普段の飼育補助ツールとしてお使いください。
金魚の薬自動計算表金魚の薬を計量する上で、500mlのペットボトルとシリンジ(注射器のような計量器)が最低限必要です。
ペットボトルはお水を飲めば簡単に手に入りますので、100均でシリンジを買うだけで揃えることができます。
自動計算表を用いた金魚の薬の計り方に関してはこちらに紹介しています。
ほんとうに誰でもできる、全ての薬に応用が可能な内容ですので、この機会にマスターしてしまいましょう。
⬇︎【金魚の薬の計り方に関して】
赤斑病の原因は水質の悪化です。
それ以外に原因はありません。
そもそも、赤斑病の症状が出た時点で、飼育者は自身の飼育環境、特に水質の悪化に対して考え直さなければなりません。
水換えの頻度・方法・量は適切か、水質が悪化しやすい環境になっていないか、ろ過フィルターは正常に作動しているか。
などなど、改善点はたくさんあるはずです。
次の赤斑病の被害者を出さないためにも、この機会に「飼育水」について改めて考え直すことが重要です。
金魚の飼育と水に関する考え方に関してはこちら
金魚の塩浴や薬浴を行うときに、誰でも自動で適切に塩や薬の量を計量できる計算表を作成しました。
こちらの濃度計算表を使用すれば、いつでも同じ濃度で、金魚の薬や塩の計量ができます。
ぜひ、これからの金魚飼育にご活用ください。