金魚の「水合わせ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
水合わせは、金魚を安全に飼育するための、とても重要な技術です。
水合わせを普段から適切に行えている飼育者は少なく、多くの方が「なんとなくのやり方」で行っています。
水合わせを適切に行わないと、金魚は大幅に体調を崩し、免疫の低下から様々な感染症や寄生虫症を発症します。
金魚の水槽を移動したときや、新規にお迎えをしたときに、数日で白点病や尾ぐされ病などの病気が発症する事例があります。
これらの移動直後に発症する感染症も、「水合わせ」を適切に行うことでリスクを最小限にすることができます。
水合わせの技術は、金魚の飼育だけでなく、メダカやあらゆる水生生物に使用することができます。
今回は、金魚の飼育初心者の方にもわかりやすく「水合わせのやり方」をまとめています。
ぜひこの機会に「正しい水合わせのやり方」をマスターしてください。
この記事では、記事内の写真の紹介に、みなさんのインスタグラムでの投稿をピックアップし、閲覧できるようにしております。
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金魚は生活する上で全身を「水」に囲まれて過ごしています。
人間で言うところの「空気」と同じです。
例えば、東京都から大阪府に移動した時、みなさんはそれほど「空気の変化」を感じることはないと思います。
これは、空気そのものが広い空間でつながっているからです。
金魚を飼育する際、どうしても水槽という限られたスペースで生活させるしかありません。
移動先も同じく限られたスペースです。
繋がりがないスペースを移動すると、そこには必ず大きな変化が生じます。
具体的には、「水質や水温」です。
金魚は人間とは異なり、体温を調整する機能が備わっていません。
水温が急激に5度変わると、金魚の体温も急激に5度下がります。
全身を水に囲まれて過ごしているため、水質が変わると、体内を巡る水も変化します。
水合わせを適当に行うと、金魚に大きな負担を与えるのはこのためです。
新しい水温、水質にできるだけゆっくりと馴染んでもらい、金魚への負担を最小限に止めるために、水合わせは必須のスキルになります。
①金魚を袋やケースに移動する
金魚の水合わせをする際、1番初めに行うべきことは「水温を合わせる」ことです。
温度に関しては、すでに飼育している金魚の移動を行う際も重要なポイントです。
金魚は数度の水温差でも体調を崩します。
金魚を移動させる際は必ず、一度金魚を分厚めのビニール袋やプラケースなどに移し、移動後の水槽に浮かべるようにしましょう。
浮かべる時間は水温差にもよりますが、およそ30分から1時間ほどで十分です。
できれば、水温計を使って袋の中の水温と、外の水温を計るようにしてください。
水合わせの土台となる「水温合わせ」を丁寧に行うことで、金魚の負担を最小限に抑えましょう。
ちなみにですが、水温合わせはこの後紹介する水質合わせよりもはるかに重要です。
人間でも、体調不良の最も多い原因は、気温の急激な変化です。
水温の変化にどれだけ気を使えるかが、金魚の水合わせのやり方において最も重要なポイントです。
②移動先の水を少しずつ入れる
水温合わせが完了した後は、水質合わせを行います。
もとの水槽の環境にもよりますが、基本的に水槽の水は時間が経てば経つほ酸化し、水質は酸性に偏ります。
これは、どんなに見た目が透明でも、水換えは絶対に定期的に行う必要がある、理由でもあります。
金魚の水換えの考え方に関してはこちらにまとめています。
水槽の移動をする際、移動先の水が新しい水である場合、日本の水道水は「弱アルカリ性〜中性」です。
例え水温がぴったり合わせられていても、酸性寄りの水質に慣れている状態で、いきなり反対の水質の環境に入れられると、、、
金魚は適応に体力を消耗し、弱ってしまいます。
最悪、水質の急激な変化によりショック死をすることもあります。※これをphショックと呼びます。
水温合わせができたら、その袋やケースの中に、少しずつ新しい水槽の水を入れて下さい。
具体的には、5分おきくらいを目処に袋の水量の1/10くらいの新しい水槽の水を導入します。
こうすればおよそ50分で、元いた水槽の水と新しい水槽の水とが半々に混ざった状態になります。
③10回投入したら適量を捨てる
10回ほど投入したタイミングで、一度袋の中の水を半分ほど捨てましょう。
まだ状態としては元いた水と新しい水が半々です。
新しい水に慣らすことが目的なので、ここからは金魚の様子を見ながら作業を継続します。
④繰り返す
満タンになったら水を半分ほど捨て、再度新しい水槽の水を入れる作業を繰り返しましょう。
具体的には、②〜③を3セットほどできれば十分です。
⑤金魚だけを移動先に入れる
ここまでで、水温、水質ともに水合わせは完璧です。
金魚は新しい環境を感じ取っており、移動後の適応も早く、病気が発生する可能性も低くなっています。
最後に、金魚だけをネットですくって新しい水槽に移動しましょう。
袋の中の水は新しい環境に入れないようにしてください。
もともと、なんらかの理由(病気の発生や水質の悪化による大規模な水換え、新しくお迎え)があっての移動、水合わせです。
元いた環境の水を持ち込むことは好ましくないため、出来るだけ金魚だけを移動するようにしてください。
新しくお迎えをした際は購入した時の袋のままでOKです。ビニール袋は分厚めのものがおすすめです。
ビニール袋のサイズ、水温差にもよりますが「30分〜1時間」ほど浮かべれば十分です。
水温の差を調整する最も大切な工程となります。
水温合わせの次は「水質合わせ」を行うことで水合わせが完了します。
5分おきに、一回の量はコップ半分以下の水の量で調整してください。
10回ほど投入したのち、袋の中からおおよそ同じくらいの量の水(半分くらい)を捨てましょう。
10回は目安ですので、例えば5回めで袋がいっぱいになったのなら、そのタイミングで捨ててOKです。
③と④を繰り返し行いましょう。3セット以上を目安にしてください。
水合わせが完了したら、「金魚だけ」を移動先に移動しましょう。
ここまでの工程がきちんとできていれば、金魚への負担はほとんどありません。
全ての工程での注意点ですが、「元いた水槽の水」は移動先の新しい環境にはなるべく入れないようにしましょう。
水温に注意する
金魚の水合わせを行う上で、最も注意しなければならないのが「水温」です。
水合わせ前と水合わせ後で、「水質」が悪くなることはほとんどのケースでないはずです。
失敗するほとんどの原因は「水温」合わせがうまくいっていないことにあります。
金魚は人間よりはるかに温度変化に弱い生き物です。
水温=体温であるため、数度の温度変化であっても消化不良や内臓の異常を引き起こします。
先ほど紹介した水合わせの手順を必ず守り、なによりも水温合わせを慎重に行うようにしてください。
塩分濃度に注意する
現在塩浴を行っていて、もといた塩分が含まれていない水槽に移動する場合、塩分濃度に注意しましょう。
金魚は全身を水に囲まれて生活をしていることから、体内と体外の浸透圧を常に調整しています。
塩浴を行っている状態だと、浸透圧の調整殆ど機能していないため、いきなり真水の飼育環境に戻すことは好ましくありません。
塩浴用の水槽で無事、体調不良や病気が回復した後は、数日置きに水換えを繰り返し行い、塩分濃度が下がった状態に慣らしていくようにしましょう。
例えば、濃度が0.5%の塩浴水槽だと、半分の水換えを3回行うだけで塩分濃度は0.6%ほどになります。
塩浴が終了した後はすぐに移動するのではなく、塩分濃度から元に戻していきましょう。
金魚の塩浴の方法に関してはこちらにわかりやすくまとめています。
ご確認ください。
薬浴・塩浴の場合は必ず先に移動する
金魚が体調を崩したり、病気になった際に塩浴や薬浴を行う機会があると思います。
多くの方が、「塩浴や薬浴を行うこと自体」に気を取られ、金魚の治療用の水槽にあらかじめ塩を入れたり、薬を入れたりしがちです。
ですがこれは、順番としては逆になります。
移動は、金魚が先です。
きちんと水温合わせ、水合わせを行った後に、適切な量の塩や薬浴用の薬を溶かしていくようにしましょう。
ただでさえ、移動だけでストレスなのに、移動先の水質まで大きく異なると、治る病気も治りません。
塩浴や、薬浴の時は「金魚が先」を間違えないようにしましょう。
移動後はエサを抜く
水合わせが成功し、無事金魚の移動が完了したら、最低でも丸1日はエサを抜きましょう。
できれば3日ほどエサを抜くのがおすすめです。
水合わせがうまくいっても、金魚は環境の変化からストレスを受けています。
ストレスと胃腸の状態はダイレクトに繋がっているため、エサやりは実施せずなるべく静かに見守るようにしてください。
エサやり実施のタイミングとしては、「勢いよく泳ぎ回るようになったら」です。
金魚は基本的に移動直後はじっとしていますが、環境に慣れると徐々に動き回り出します。
金魚の水合わせは、金魚を飼育していると必ず必要になるテクニックです。
ですが、水合わせのやり方は「なんとなく」や「我流」になってしまっている方が多く、知らず知らずのうちに金魚にダメージを与えてしまっています。
金魚が体調を崩すのは、「水質が悪化した際」と、「移動して環境が変わった際」の2つのタイミングがほとんどです。
やり方は本当に簡単であるため、とにかくゆっくり、確実にこのサイトに書いている方法を実践してください。
きっと、これまで以上に元気な金魚を見ることができるはずです。
水合わせに自信を持てると、金魚飼育の幅は一気に広がります。
金魚の水合わせのやり方をマスターして、充実した金魚ライフを送りましょう。